「ソレイユの鐘」制作メイキング編

改めまして、この度「第4回銀座中央ギャラリー公募展」の一次審査を通過いたしました。
こちらの公募展は名前の通り、銀座にある奥野ビルの銀座中央ギャラリーさんが主宰する公募展です。
テーマは自由ですが、作品サイズのみF4号という決まりがあります。

二次審査は現地会場でお一人3票の投票と作品の販売結果が集計されるそうです。
皆様に直接作品を見ていただける機会をいただき大変嬉しいです。

久しぶりの大作なので制作過程を思考プロセス編と制作メイキング編の2つに分けてご紹介していきたいと思います。
公募展の日時詳細等はこちらの記事からお読みいただけます。

出展作品の概要

エントリーNo.227

作品タイトル:「ソレイユの鐘」
作家名:Moet.K
画材技法:ミクストメディア(アキーラ絵具、刺繍、箔/シルク、木製パネル)
額装済み 作品証明書付き

作品の大まかな構成

今回の作品は人物の顔以外すべて手刺繡で仕上げています。
支持体は木製パネルに箔押ししてそれをシルク100%のオーガンジーで包んだ作りになっています。
刺繍と絵画の融合を構想していた最中に、日本画家さんから“裏箔“と“裏彩色”という技法があることを教えていただき、それが今回の作品のヒントになりました。

刺繍自体は全てオーガンジーに施し、人物の顔部分はもう少し強度のある別の布にアキーラ絵具で描いてからベースのオーガンジーに縫いつけています。
オートクチュールの世界でも同じように刺繍のパーツをそれぞれ作ってから大本の服地に縫い付けることがあるので同じようなイメージです。

全体的にデコラティブな雰囲気なので、異素材を組み合わせつつ下地、刺繍、人物の調和がとれるように心がけました

そもそもゴールドワーク刺繍とは

今回の作品では一般的な糸の刺繡やビーズ刺繡も用いていますが、メインで使用しているのはゴールドワーク刺繡という技法になります。
ゴールドワーク刺繍とはメタル糸というコイル状の細い金属で作られた糸を用途に合わせてカットして、蜜蠟で蝋引きした糸で縫い留めていく刺繍です。

ヨーロッパの王室や教会の装飾で見かけることがあり、司祭のローブなどをイメージしていただくとわかりやすいかもしれません。
ゴールドワークという名前の通り昔は本物の金を使っていたようです。
現在流通しているのは他の金属を用いたものですが、力を加えると曲がってしまって使えなくなってしまうような繊細な素材なので、お値段は少々お高めです…
日本で販売しているお店自体が少ないので、私は個人輸入で入手しています。

メタル糸はある程度の長さがあるので、細かく切って縫い付けるチップワークという方法や長さを保ったまま線を描くように縫い止めていくコーチングといった使い方ができます。
長さを自由にコントロールできるので幾何学模様や半立体の作品を作ることもできます。

チップワークで隙間を埋めているところ

下絵から刺繍過程

元々細かい線画は描かないタイプなので下絵は形どりの感覚でざっくり描いていきます
普通の刺繍と違って両手が空いた状態でないとできないため、直径30cmほどの大きな刺繍枠にそれを支える専用の足パーツを使っています。

続いてフェルトを花びら部分の土台として縫い付けていきます。
刺繍が単調にならないように今回は一部のみ取り入れてみました。

フェルトを下地にするとその部分はふっくらと立体的になります。
手間はかかりますが、メタル糸との相性がよくて下地がある部分はより輝きが増して見えるので個人的にとても好きな表現です。

ひまわりの片側が終わったところです。
ビースやスパンコールもバランスを見ながら隙間なく刺繍していきます。
オーガンジー自体は数グラムしかありませんが、刺繡部分を進めていくと重量がどんどん増していきます。
キャンバス仕立てにした時に布が重さに耐えきれるか不安がでてきたので端の処理方法を並行して考え始めました。

両側の刺繍がある程度済んだところで箔押しした木製パネルの上にのせて見え方を確認中です。
光が当たると下地の箔が光を反射してビースやメタル糸が輝くような効果を狙っています。
木製パネルの端まで刺繍がくるように側面までサイズを測って刺繡をしています。

人物の洋服部分に移ります。
左右の金色のひまわりと対比するようにクリアまたは半透明の素材をメインに使用しています。
スパンコールの連続刺しで布のドレープ感を表現してみました。
アクセントでスワロフスキークリスタルを使用してみましたが、輝き方が普通のガラスビーズの比にならないくらい綺麗でクオリティが底上げされた気がします。
今後の作品でもぜひ取り入れたいところですが、それが叶わないのが残念です。
(スワロフスキー社は2021年にビーズ等のパーツ材料の販売終了を発表しています。)

8割方完成したところでパネル仕立てにする前の裏側の様子です。
ここは表から見えない部分なので特出して何もありませんが…今回の刺繍で一番使用頻度が高かったのは各種パーツを縫い留める為の糸です。
一巻き50mのものを2色で1.5個ほど使用しました。手芸をなさる方には同感していただけると思いますが、通常の使用ではありえない量の消費なので自分でも驚きました。

余談ですが、作成途中に全く別件で指を怪我してしまって細かい作業ができなくなり作業が中断してしまいました。
そんなこんなで後半の写真がほとんどなくてすみません。
刺繍は根気よく進めていく以外に方法はないので、余裕をもってスケジュールを立てていたはずがこのイレギュラーな出来事で後半はかなりの追い込み状態になってしまいました。
締め切りには間に合ったので終わり良ければ総て良し、なのですが精神的にも体力的にも無理するのはあまり良いことではないので次回はもっとバッファを持たせようと思います。

余談の余談

銀座中央ギャラリー公募展の一次審査は画像審査で公式ホームページから作品情報と画像を送信する応募方法でした。
気合を入れて一眼レフカメラで撮影したのはいいものの規定より画像サイズがかなり大きくて、送信できず慌ててPhotoshopでリサイズしたのはいい思い出です。

制作期間自体は約一か月ほどだと思います。
その間ケガで中断したり別の展示会があったりと予定が詰まっていたのでかなりタイトなスケジュールでした。
後半は朝起きてから寝るまで食事以外はずっと机に向かう毎日でした。
刺繡自体は楽しいので時間があっという間に過ぎていく半面、眼精疲労がひどくて身体には無理をさせてしまったなと反省しております。

普段机の上は毎回片付けて都度取り出すのが習慣になっているのですが、そんなことも言っていられずビーズやらスパンコールに囲まれて過ごしていました。
発送後に大掃除をして机をリセットした時はさっぱりと洗われたようないい気分でした。

メタル糸の在庫はまだあるものの次の作品の構図が浮かんできて新たに材料仕入れようかと目論んでいます。
(円安が辛いところですが…)

額装と現地会場での様子

私は普段額なしの作品販売がほとんどなのですが、今回は使用した素材上作品の保護のため額装が必須だったので世界堂さんでお願いしました。
フチの刺繍もしっかりと見えるようにボックス額一択で考えていたので悩むことなく即決しました。

色味はゴールドが引き立つようにブラックをチョイスしました。
額装したことで刺繍の物感が薄れ作品としての一体感がでたように感じます。

こちらの写真は初日にギャラリーにお伺いした際に撮影したものです。
いい感じにライティングしていただき作品がより良く見えるように展示されていて感謝です。
写真ではどうしても表現しきれない部分があるので、ぜひ現地で原画を見ていただけたら嬉しいです。

ご購入の際には作品、額、専用の箱、作品証明書をセットでお渡し致します。
詳しくは銀座中央ギャラリーまでお気軽にお問い合わせください。

展示会 詳細情報

「第4回銀座中央ギャラリー公募展」

展示場所:奥野ビル内ギャラリー展示
・銀座中央ギャラリー(4階411号室)
・ギャラリー 邱山居銀座 (3階315号室)
・画廊一兎庵(2階201号室)

会期: 2024年6月24日(月)~6月30日(日)
開廊時間 : 12:00 ~18:00 最終日15:00迄
2次審査投票期間:6月24日(月)~6月29日(土)12:00 ~ 18:00
※会期は30日までですが、2次審査の投票期間は29日までなのでご注意ください。

お近くにお越しの際はぜひお立ち寄りください。
お一人3票の投票制なので投票していただけたら大変嬉しいです。

よろしくお願いします。

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